信仰が生んだ建築
ドーム、ヴォールト、空に開かれた壇。異なる伝統が信仰にどのような形と場所を与えたのか、四つの建築で読み解きます。
02 · トルコ · 1575年
セリミエ・モスク
80歳近くになったオスマン帝国の大宮廷建築家ミマール・スィナンは、生涯の悲願であった「アヤソフィアを超える大ドーム空間の創造」に挑んだ。スィナンは自伝の中でシェフザーデ・モスクを「見習い時代」、スレイマニエ・モスクを「職人時代」、そしてエディルネのセリミエ・モスクを「棟梁(巨匠)時代の最高傑作」と総括した。 1568〜1575年にセリム2世の命により旧都エディルネの高台に建立されたこのモスクは、構造工学上の革命を成し遂げた。 直径約31メートルの巨大な大ドームを外周寄りの8本の八角形巨柱(象脚柱)で支持することにより、堂内中央から一切の柱を排除し、数百の窓から光が降り注ぐ遮るもののない大空間を実現した。
物語を読む04 · インドネシア · 800年ごろ
ボロブドゥール
ボロブドゥールの頂上に立つと、建築は静かにあらゆる現世の物語を語るのをやめる。下層の回廊では、壁一面に船、市井の人々、象、踊り子、王族の姿が精緻な浮き彫りでひしめいている。しかしここ最上部の3段の円形テラスには、具象的な絵柄は一切存在しない。あるのは格子状の透かし彫りが施された72基の釣鐘型ストゥーパだけであり、その格子越しに中を覗くと、微かに座仏の姿が見て取れる。そして中央にそびえる最大のストゥーパは完全に密閉され、中は空虚である。巡礼者は幾重にも巡る回廊を何キロも登り、物質世界が空(くう)へと溶け込む無色界の境地へと到達するのである。
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